パッシブデザインの家が目指すのは、1年を通じて、 建物の中にある自然エネルギー(太陽・風・地熱)を最大限に活用・調節できるようにして、心地よく暮らせる住まいとなること。そうした住まいが実現されれば、 寒い、暑い、風が通らない、暗いといったストレスから解放され、 光熱費の負担も小さくなります。
快適で経済的にも嬉しい、冬の起床時の居室の気温がおよそ15℃以上になるように設計
断熱性能を高めることは建物全体の保温性能を向上させ、様々なメリットを与えてくれます。
このメリットはとても大きく、逆に一定の断熱性能が確保されないときのデメリットがとても大きいため、建物に一定以上の断熱性能を組み込むことがパッシブデザインのベースをつくることになります。
夏の暑い日差しを室内に入れないための日射遮へいは、夏期における快適と省エネを実現させるための基本中の基本です。最近になって断熱性能はかなり注目されるようになってきましたが、日射遮へい性能についてはまだまだ理解や工夫が足らないように思います。とくに「断熱性能(保温性能)を高めていくと、夏の室内が少しずつ暑くなっていく」という現象が起きるのですが、この問題を解消するには日射遮へいのデザインをしっかり考えることが何より重要です。
身体に風が当たると涼しいと感じます。特に低温の風が当たるとより涼しく感じます。この効果を利用しようというのがパッシブデザインの自然風利用におけるひとつ目の狙いです。もうひとつの狙いは建物に溜まった熱を外に出すことです。これは換気による排熱ということですが、これも低温の風を通すほど効果が大きくなります。このことからわかるように、自然風利用は外気温が比較的低いときに行うのが有効です。つまり、盛夏の日中に風を通すことを考えるのではなく、盛夏であれば夜間を中心になり、盛夏の前後(中間期)であれば、日中でも風を通すことが有効な日や時間がある地域が存在します。
パッシブデザインの自然風利用で大事な事は、建築地の「風の特性」を知るということです。特に、「涼しい風」を必要とするのは夏期なので、7月・8月・9月の風の特性が必要になります。また、昼と夜の風の特性も知りたいことです。
昼光利用のデザインが目指すのは、昼間に人工照明を点けなくても過ごせるようにすることであり、また自然光による快適な明るさを実現させることです。そのときの基本は「昼間に長く過ごす部屋には2面に窓を設ける」「それ以外の部屋には少なくとも1面に窓を設ける」ということなのですが、他にも様々な“技”があります。
・南北二面からの光を取り入れて部屋を明るく
・吹き抜けやトップライトで明るく
・パッシブデザインの昼光利用で、太陽の光で照明がいらず、省エネに貢献。
「日射熱利用暖房」とはその言葉の通り、冬に日射熱を室内に採り入れて暖房に使うという設計技術です。このときに重要になるのが、日射熱を採り入れる「集熱」、入った日射熱を逃がさないための「断熱」、入った日射熱を蓄えておく「蓄熱」の3つのデザインをしっかり考えることです。この3つが高いレベルで実現できれば、快適性と省エネルギー性が極めて高い建物になります。ただし、地域によっては日射熱利用暖房があまり効果的ではない場合があったり、敷地の南側に建物などがあると冬の日射が遮られ十分な集熱ができないため、事前の検討を行うことが重要です。
パッシブデザインの設計項目を用いて、「質の高い室内環境を実現させながら、省エネルギーに寄与する」家づくりが出来る。また、パッシブデザインから生まれた「質の高い室内環境」が、ヒートショック対策・疾病等の改善の「健康面」に、温度差のない室内空間が「快適面」に多大なる効果を生み出していく。そして、高気密・高断熱の家は「省エネルギー」にもなり、エネルギー問題・地球環境対策にも寄与している。さらに、「パッシブデザイン」に真剣に取り組む建築実務者の中には、建物の外皮計算・一次エネルギー消費量などから「室温」を計算して導き出し、「冬の室温の最低温度」「夏の室温の最高温度」を割り出し、計算で「暖かい家」「涼しい家」を提案している実務者も存在している。
こういった実務者は、計算の中から「正確」な月々の光熱費を割り出し、住宅ローンでの換算で考えると「安く」なるという事も計算上でも、実績としても共有しています。「健康」で「快適」、「省エネ」にもなり、「適切な価格」の家つくりを考える時ではないでしょうか・・・